【木彫りアーティストとしての道のり】
──木彫りを始めたのはいつですか?
「僕が木彫りを始めたのはコロナ禍の頃だったんです。それまで僕は卓球を趣味でやっていて。卓球をやるのも楽しいんですけれども、運動をし終え、友人と話している時間が楽しかったんです。ところが、コロナ禍に入って、卓球場が閉鎖され、友人たちとも会うことがなくなってコミュニケーションが一気に遮断されたんです。すごくさびしい気持ちになって。たまたま木彫りを始めて、自分のSNSに投稿した時に、初めて『いいね』がぴょこぴょこっと2〜3個ついて。そこでコミュニケーションというものを久しぶりに感じたんですよね。すごくいいなと思って、木彫りを通してコミュニケーションをもっと広げたいなって気持ちになりました」
──最初に作った作品は?
「最初に作ったのがコーヒー豆。その時はコーヒー豆が木の素材に似ているからという理由で作ってみたんですね。まだ着色の技術も何もなくて、DIYで使っていた家具に塗るための茶色いオイルを塗っただけだったんですけれど」

──SNSはいわゆるプライベートのアカウントでアップしていたんですか?
「個人的なアカウントで、『ちょっと木を彫ってみたよ〜』みたいな軽い感じで、友人や知人に向けてアップしたら、『いいね』がついて。『これ、すごくない?』みたいなコメントが来たりして。その反応を見ておもしろいなと思って、何かもう1個作ってみようと思って、木のそのままの色でピーナッツを作りました。それからピスタチオを作ったんですが、見てくれている友人に『何かもっとおもしろいものを見せたいな』と思って、お菓子とかを作り始めたんですよね。最初はそんなに上手じゃなかったですけれど、今までと違う反応があったりして、すごく楽しいなって思って『もっとやってみよう!』と自然と作品が増えていったんです」
──みんなが楽しんでくれる気持ちが木彫りへの情熱につながったのでしょうか?
「『彫ってみよう』って思う気持ちは、実は自分の中にそれほどなくて、友人などから『これ作ってよ』みたいにリクエストされるんですよね。それを作るとしたら、自分だったらどうおもしろく見せることができるかなっていうのをつなげていって、発展させてアイデアにすることが多いですね。それではじめは『できないんじゃないか』と思ったものをやっています」
──「できる!」ってものじゃなくて、「できない!」ってものを作るんですか?
「『できる!』と思ったものはおもしろくないんですよ。『これできないでしょ?』みたいに言われたものを作ってやりたいなって気持ちになるんですよね。『作ったらびっくりするでしょ』って気持ちで」
──どんどんびっくりさせてやろうと。
「できないものに最初に挑戦したのは、木彫りのナッツとか作り始めたときなんですけれど。卓球チームの友人が「透明なものを作ってよ」って言ってきたんです。「そんなの無理に決まっているじゃん」って言いながらも、作ってみせたら絶対にびっくりしてくれるだろうなって思って。じゃあ透明なものを作ってみようって、氷の作品(『溶けかけの氷』)を作ったんですよ。だから『驚かせたい、何かびっくりさせたい』という気持ちがあるんですよね」

──確かに氷の作品は想像つかないですよね。
「自分の中ではできないと思っているものを作りたいんですよね。できないギリギリを攻めたい。とんでもなくできないものもあるんですよ。わたあめだとか。ふわふわ感のはしっこをどう表現するかとか、『できなさそうなんだけれど、がんばったらできるんじゃないかな』っていうのを探しています。なんとなくイメージをしてみて、見てくれる人の反応というか、期待を裏切りたいんですよね。『うわ、やられた』みたいなのが楽しいんです」
──そして「木彫りアーティスト」としての道を歩むことになります。
「木彫りをしていく中で、SNSで見てくれている人たちから、『展覧会開いてください』だとか、『近くで実物を見たいです』ってコメントがすごく多くなってきて、ちょっとずつ気持ちが高まっていきました。当時は公務員だったので、本格的な展覧会というのはできないし、作品集を作ったりとかもできなかったので、今のままだと、SNSでアップするだけで終わってしまうなって思って。もっと見てもらうためには転職するなり、プロでやっていくなりっていうのをしていかなければと独立を決意しました。もっとみんなを楽しませたいなって気持ちが高まっていったので、自分の中では、答えが見えていなくてもいいかなって思っていて。どうやって活躍していくみたいな未来予想図が見えなくても、活動は無限に広げられる気がしていて。それこそ木彫りを始めて、ちょっとバズり始めてから、人生で一度も経験したことがなかったようなことをたくさん経験しました。テレビに出演したりとか。そういう話をみなさんからいただいて、自分で目標を決めなくても、好きなことを一生懸命やっていれば、いずれ何かにつながるんじゃないかなってすごく思っていたんです。だから木彫りアーティストとしての道を選びました。木彫りに関心を持ってくれる方が増えたらうれしいし、みんなでいろいろなことに挑戦して、むしろみんなから驚かされたい気持ちもあります。みんなで王国作りたい。僕は食べ物を作って、ほかの人は家具とか雑貨とかを作って、ひとつの家ができたりしたらおもしろいですよね」
((3)【食べ物の作品が多い理由】へ続く)
キボリノコンノさん プロフィール
木彫りアーティスト。1988年生まれ。2021年に趣味で木彫りをはじめ、「あっと驚くもの」をテーマに作品を制作、SNSで発表し続けている。数多くの作品がテレビやインターネットで話題となり、2023年からプロの木彫りアーティストとして本格的に活動を開始。全国各地で展覧会やワークショップなどのイベントを開催。
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(取材・撮影日:2023年11月12日 少年写真ニュース編集部 吉岡)