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「子どもたちのために」という情熱じょうねつを忘わすれずに
養護教諭ようごきょうゆ 芝しば裕介ゆうすけ先生インタビュー

2025年10月8日 by yoshioka

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学校で子どもたちを心身ともに支ささえる存在そんざいである養護教諭ようごきょうゆ。

宮崎みやざき県立延岡のべおかしろやま支援しえん学校高千穂たかちほ高校に養護教諭ようごきゅうゆとして勤務きんむする芝しば裕介ゆうすけ先生は、いろいろな経験けいけんをしながら養護教諭ようごきょうゆになる夢ゆめを叶かなえました。その経緯けいいや今後の目標もくひょうなどについて伺うかがいました。


芝裕介先生(写真:本人提供)

──子どものころはどんなお子さんでしたか?

本を読んだりしながら、「こうだったらいいなあ」という夢ゆめをいつも描えがいていました。近い未来みらいとでもいうのでしょうか? 空が飛とべたり、車が空を走っていたり。好奇心こうきしんは旺盛おうせいで、いいなと思ったことにはまずチャレンジしていました。小学1年生から剣道けんどうをやっています。兄がやっていたので、その姿すがたを見て「楽しそうだな」と思ったのがきっかけで、ずっと続つづけています。大人になってからもそれは変かわらずで、「やらない後悔こうかいよりかは、やって反省はんせい」を大切にしています。


──芝しば先生は養護教諭ようごきょうゆになる前に、看護師かんごしをされていたそうですが、この道に入ったきっかけを教えてください。

中学生のときに看護師かんごしが主役のドラマを見ていて、「かっこいいな!」って思ったんです。女性じょせいが多い業界で、男性だんせいも看護師かんごしになれるのかって。高校生になって、職業体験しょくぎょうたいけんの機会きかいがあったので、看護師かんごしを実際じっさいに体験たいけんしてみました。寝ねたきりの人の手足を洗あらったり、サポートをしたりするなかで、その人のために何かをしたいという気持ちが自分のなかでガツンと生まれたんです。もともと人とのつながりを持つことが好すきだったのですが、わたしは、誰だれかが困こまっているとき、できないでいるときに、すすんでサポートして手を差さし伸のべる性格せいかくなんです。それで、高校はもともと文系ぶんけいだったのですが、3年生のときに、看護師かんごしになるために、文系ぶんけいのコースのまま看護師かんごしの大学を受験じゅけんしました。行きたい大学も、地元にあったのでよかったです。大学に無事ぶじ入学して、当時は看護師かんごしと保健師ほけんしを勉強できるカリキュラムでした。大学を卒業そつぎょうしたら、大学病院に就職しゅうしょくして、主に内科(心臓しんぞう、消化器しょうかき、腎臓じんぞう)の看護師かんごしとして7年勤務きんむしました。患者かんじゃさんと接せっしているなかで、「看護師かんごしに向いていますね」といわれるとすごくうれしかったです。経験けいけんを積つんでいくなかで、小さいころから健康けんこうについてちゃんと勉強をしていたら、大人になって予防よぼうできる病気もあるし、リスクを減へらすことができるのではないかと思うようになりました。そうしたら身近で教育できるといったら学校だなと思ったんです。


──そこから養護教諭ようごきょうゆの道へ。

小さいときからの健康けんこう教育が大切なのではないかと、学校教育への転職てんしょくを考えました。わたしの場合は、保健師ほけんしの国家資格しかくをとっていたので、それを教育委員会に提出ていしゅつすると養護教諭ようごきょうゆの2種免許しゅめんきょをもらえるんです。ただ、当時、男性だんせいの養護教ようごきょうゆ諭に関かんする情報じょうほうが少なくて、宮崎みやざき県で本当に養護教諭ようごきょうゆになることができるのかと、再就職さいしゅしょくについて不安がありました。それなら、体育がきらいな子が体育を好すきになるように、保健ほけん体育の先生になって、健康けんこう教育に携たずさわろうと考えました。


──体育の先生にはどのようにしてなったのですか?

大学に行き直しました。看護師かんごしを一度やめて、体育大学に通いました。このときは両親に本当に感謝かんしゃしました。一度大学に行っているのにもかかわらず、体育大学に行き直させてくれたんです。こうした進路変更へんこうなどの人生の選択せんたくに理解りかいを示しめしてくれた両親には、本当に感謝かんしゃしかありません。体育大学では在学中ざいがくちゅう、2年生と3年生のときに、JICA海外協力隊かいがいきょうりょくたいの短期派遣はけん事業に参加さんかしました。南米のエクアドルで剣道指導けんどうしどうを1か月、2度派遣はけんしていただきました。


エクアドルでの剣道指導の様子(写真:本人提供)

──そのきっかけは?

好奇心こうきしんが旺盛おうせいというのがわたしのベースなのですが、海外については、「日本とちがう世界ってどういう感じなんだろう?」という気持ちがあったんですね。たまたま剣道けんどうでJICA海外協力隊かいがいきょうりょくたいに参加さんかした人の話を聞いていたので、わたしもそういうことができたらいいなと思っていたんです。それで応募おうぼしたらチャンスをいただくことになりまして、エクアドルに行きました。


──現地げんちでは具体的ぐたいてきにどのような活動をされたのですか?

剣道けんどうを教えるのですが、その環境かんきょうもさまざまでした。日本では板張いたばりの道場や体育館で行うのが当たり前ですが、エクアドルでは芝生しばふやダンス練習場、スポンジマットや畳たたみ、むきだしのコンクリートの上などで、十分な練習場ではありませんでした。剣道着けんどうぎや防具ぼうぐ、竹刀しないなども不足するなかで、どうしようかなと思いましたが、その土地ごとの特色とくしょく(環境かんきょう)に合わせた練習内容ないようを考えました。その場所の良よさをいかして工夫くふうしていくというのは、とても勉強になりました。2回目にエクアドルに行ったときがわたしのターニングポイントで、そのときの思いから養護教諭ようごきょうゆになろうと決心しました。


──どのような思いが生まれたのですか?

1か月の派遣はけんなので、わたしは入国して1か月経たったらいなくなってしまうんです。1か月では、現地げんちのみなさんが上達じょうたつしたかどうかの評価ひょうか自体が難むずかしい場合があります。だから、どのようにしたら、伝えたことをそのあともしっかり続つづけてもらえるのかなって思いまして。指導内容しどうないようを継続的けいぞくてきに取り組んでもらうためには、動画を撮とったり、記録きろくを残のこしたりする工夫くふうが必要ひつようでした。この状況じょうきょうを学校に当てはめてみるとわたしの中でストンと腑ふに落ちました。


──具体的ぐたいてきには?

学校では教員が生徒せいとに指導しどうを行いますが、その場限かぎりではなく、できれば卒業後そつぎょうごも継続けいぞくして実践じっせんできるように関かかわりを工夫くふうしたいと考えました。そして、これまでの看護経験かんごけいけんをいかして子どもと接せっするのであれば、やはり養護教諭ようごきょうゆとして教育に携たずさわりたいと思ったんです。この経験けいけんで得えた「場所や環境かんきょうに合わせた工夫くふう」や、「継続けいぞくするための関かかわり」については、今でも大切にしています。


──体育大学を卒業そつぎょう後、すぐに養護教諭ようごきょうゆの道みちに進むことができたのですか?

試験しけんを受けて、大学を卒業そつぎょうした年から公立の学校に採用さいようされました。わたしの場合は特別支援とくべつしえん学校でした。それまで宮崎みやざき県には男性の養護教諭ようごきょうゆはいなかったので、最初さいしょはびっくりされたりしましたが、養護教諭ようごきょうゆになる前に、「男性養護教諭ようごきょうゆ友の会」という勉強会があることを知って参加さんかしたんですね。そうしたら全国から男性だんせいの養護教諭ようごきょうゆが集まって勉強していたんです。その姿すがたを見て男性だんせいでも養護教諭ようごきょうゆになれるんだって自信じしんになりました。


──どんなところにやりがいを感じますか?

子どもたちが登校して1日を学校で過すごして、無事ぶじに下校することです。ときには体調が悪かったり、悩なやみがあったりして保健室ほけんしつに来る子どももいますが、対応たいおうのあと、次の機会きかい(次の日や、次の時間)には、元気に教室へ戻もどって授業じゅぎょうを受けている子どもの姿すがたを見ると「よかったなあ」って思います。また、複数年ふくすうねん子どもたちと関かかわるので、1年目で見たその子の姿すがたと、年数を重ねた成長せいちょう(身体的てき、精神せいしん的てき)を間近で見ることができるのもうれしいです。


──たいへんなことはありますか?

指導しどうが正しいか、すぐに結果けっかが出ないところが不安ふあんになります。また、校内で自分の判断はんだんなどを相談できる人が少ないこともそうですね。前任校ぜんにんこうでは、養護教諭ようごきょうゆが二人勤務きんむしていたので、対応たいおうの確認かくにんなどはその都度できましたが、現在げんざいは一人なので、すぐ確認かくにんすることができず、近隣きんりんの学校の養護教諭ようごきょうゆに相談したり、休日に、勉強会に行って疑問ぎもんを相談したりしています。


子どもたちのことを考えながら、資料を作ります(写真:本人提供)

──養護教諭ようごきょうゆをやっているなかで何か印象深ぶかかった出来事などがあれば教えてください。

初はじめて会う生徒せいとは、保健室ほけんしつの先生が男性だということに驚おどろく様子もありましたが、そのあとは何事もなかったように、ふつうに保健室ほけんしつの先生として接せっしてくれています。子どもより、意外と大人のほうが混乱こんらんする場面もありました。

けがや体調不良ふりょうではないけれど、昼休みに保健室ほけんしつに来て、一発ギャグをやっていく生徒せいとがいました。最新さいしんの芸人げいにんさんのものや、なつかしい芸人げいにんさんのモノマネもあり、たくさん笑わらわせてくれました。たまに、その子が保健室ほけんしつに来ない日もあって、そういうときはどこかでその子のギャグを心待ちにしている自分に気づいてしまったり。子どもたち一人ひとりに、養護教諭ようごきょうゆであるわたしも元気をもらっていて、癒いやされているんだなと感じています。


──最近さいきんも男性だんせいの養護教諭ようごきょうゆが主役のドラマが人気ですが、男性だんせいの養護教諭ようごきょうゆの理想的りそうてきなあり方やご自身が考える展望てんぼうなどはありますか?

ドラマや書籍しょせき、そして「男性養護教諭だんせいようごきょうゆ友の会」という団体だんたいによる日本各地かくちでの研修会けんしゅうかいや、SNSになどよる啓発けいはつ活動により、男性だんせいの養護教諭ようごきょうゆの認知にんちも高まっていると思います。わたしも「男性養護教諭だんせいようごきょうゆ友の会」の研修会けんしゅうかいに参加さんかし、実際じっさいに養護教諭ようごきょうゆとして働はたらいている先生方にお会いし、男性だんせいの養護教諭ようごきょうゆの存在そんざいを認識にんしきし、「男性だんせいでも養護教諭ようごきょうゆになることができるんだ!」と勇気ゆうきをもらいました。

男性だんせいの養護教諭ようごきょうゆも、1人の養護教諭ようごきょうゆ(専門職せんもんしょく)として、子どもに関かかわることができればと考えています。「男性だんせいであれば、女性じょせいとセットで働はたらかないと……」という話もありますが、男性だんせい1人でも保健室ほけんしつで活動している先生はいます。

もちろん女性じょせい1人、男性だんせい1人ずつ先生がそろった保健室ほけんしつであれば、子どもの対応たいおうの窓口まどぐちの一つ(選択肢せんたくし)になり得えます。

例たとえば、わたしが高校生のときの保健室ほけんしつの先生は女性じょせいでしたが、女性じょせいの先生に相談そうだんしにくいこともあり、「公民こうみん」の男性だんせいの先生に相談そうだんをしたことがありました。

また、わたしが養護教諭ようごきょうゆになってから、他校たこうの女性じょせいの養護教諭ようごきょうゆからは「男子生徒せいとの性せいについて対応たいおうが難むずかしい。男性だんせいの先生が対応たいおうしてくれるとありがたい」といわれることもあります。わたしも異性いせいの対応たいおうに困難こんなんを感じることもあります。それは女性じょせいの養護教諭ようごきょうゆでも同じように感じる場面があると思うので、そうした場合に、いろいろな選択肢せんたくしがあるなかで、適切てきせつに対応たいおうできることこそが、子どもにとっても有益ゆうえきなのではないかと思います。

学校に最低さいてい1人の養護教諭ようごきょうゆはいますが、小学校から高校まで、男性だんせいの養護教諭ようごきょうゆに出会う子どもの数は圧倒的あっとうてきに少ないと思います。わたしも感じたように、その存在そんざいを知らなければ、男性だんせいでも養護教諭ようごきょうゆになることができるとは思わないかもしれません。

ほかの学校に勤務きんむする女性じょせいの先生方へのお願ねがいにもなりますが、一言、「男性だんせいも保健室ほけんしつの先生にもなれるんだよ」と男子生徒せいとに伝つたえてもらえるとうれしいです。養護教諭ようごきょうゆになる、ならないは別べつとして、何かのきっかけになればと思います。


──養護教諭ようごきょうゆとして必要ひつようなことや、逆ぎゃくにご⾃⾝が考える課題かだいなどはありますか?

養護教諭ようごきょうゆの仕事は多岐たきにわたります。しかし、仕事内容ないようをカバーするスキル(技わざ)は、まだまだたくさんあるだろうなと考えます。そして、わたし自身、まだ知らない知識ちしきもあると思っています。

 例たとえば、養護教諭ようごきょうゆになるには、教育学部や看護かんご、福祉ふくし、心理、保育ほいくなど、さまざまなルートがあります。わたしは看護かんごですので、看護かんごで学んだ知識ちしきや理論りろんなどもふくめて活用していますが、もしかすると福祉ふくしや心理、保育ほいくなどのわたしが経験けいけんしていない分野にも、子どもたちへの関かかわりのヒントがあるのはないかと考えます。

 そのため、使える知識ちしきや技術ぎじゅつを積極的せっきょくてきに学び、吸収きゅうしゅうして、子どもたちに還元かんげんしていきたいと思っています。


──今後の⽬標もくひょうや夢ゆめ、読者へのメッセージをお願ねがいします。

養護教諭ようごきょうゆとしては、まだまだ未熟みじゅくで、足りない部分もたくさんあります。日々勉強です。子どもに関かかわることができる感謝かんしゃの気持ちと情熱じょうねつを忘わすれず、さまざまな方法ほうほうや方向から、子どもの健康けんこうや将来しょうらいを考え、実践じっせんしていきたいと思います。

 課外かがい活動として、休日を使い、ほかの養護教諭ようごきょうゆの先生といっしょに、勉強会を行っています。医師いしや臨床心理士りんしょうしんりし、救命救急士きゅうめいきゅうきゅうし、行政ぎょうせいなど、いろいろな講師こうしの先生方に来ていただいて、養護教諭ようごきょうゆのスキルアップと、養護教諭ようごきょうゆや他業種たぎょうしゅの方との交流や、つながりを広げることを目指しています。

企画きかくの一つとして、2025年5月に、宮崎みやざき県内外の団体だんたいさんや企業きぎょうさんなどと協力きょうりょくして、わたしたち養護教諭ようごきょうゆだけではなく、学校保健がっこうほけんに関かかわるすべての人が気軽に参加さんかでき、学びや情報じょうほうを得える機会きかいになればと思い、「養護教諭ようごきょうゆEXPO 2025」という勉強会を開催かいさいしました。

ありがたいことに「また開催かいさいしてほしい!」との声も多くいただいています。勉強会という位置いちづけですが、堅苦かたくるしく考えず、参加さんかする大人たち(学生含ふくむ)が「楽しい」、「ワクワクする」気持ちを持って、さらに得えたものを、それぞれの活動の場に持ち帰って活用できるようなイベントとして、続つづけていければと思っています。

ここで一つお知らせです。

2026年2月に、東京で、2回目の「養護教諭ようごきょうゆEXPO 2026」を開催かいさいすることが決定しました。前回はオンラインがメインでしたが、今回は現地参加げんちさんかをメインとしたハイブリッド開催かいさいで、おおまかには「講義こうぎ」と「展示てんじ」の2つに分けて実施じっしします。養護教諭ようごきょうゆをふだんから支ささえる企業きぎょうさんや団体だんたいさんの活動を展示てんじから知ったり、全国の仲間なかまたちとつながったりすることを目的もくてきに、1回目からさらにパワーアップして開催かいさいしますので、みなさん奮ふるってご参加さんかください!

最後さいごになりますが、わたしは養護教諭ようごきょうゆとしてはベテランでもなく、まだまだ未熟みじゅくな部分もありますので、毎日勉強しながら子どもたちと関かかわっていきたいと思っています。「子どもたちのために」という情熱じょうねつを忘わすれずに、いろいろな方面から子どもたちの健康けんこうを考えていきたいと思っています。■


養護教諭EXPO 2026 ーつながる学校保健ー

日時:2026年2月22日(日) 11時〜16時(予定)
開催場所:東洋大学赤羽台キャンパス(東京都北区)
※ハイブリッド開催(ZOOMによる参加)
参加費用:会場(記念品付き)1,000円 オンライン 500円

公式WEB  https://yogoteacher-expo.my.canva.site/expo2026
公式Instagram  https://www.instagram.com/yogo.teacher.expo/

(取材:2025年9月30日「デジタル少年写真ニュース編集部」吉岡)

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カテゴリー: 学校現場からタグ: JICA, 中学校, 保健, 保健の先生, 保健室, 保健師, 剣道, 宮崎大学, 宮崎県, 小学校, 延岡市, 海外協力隊, 特別支援学校, 男性養護教諭, 男性養護教諭の会, 看護師, 養護教諭, 高等学校

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