日本財団パラスポーツサポートセンターが実施する、パラスポーツを通じて、児童生徒たちに共生社会への気づきや学びの機会を提供するパラスポーツ体験型出前授業「あすチャレ! スクール」。
2月10日に、東京都昭島市にある啓明学園初等学校の6年生を対象に実施されました。

「あすチャレ!スクール」が啓明学園にて開催されるのは今回で3回目。
第1回は、2021年にさかのぼります。講師として来校した根木慎志さん(シドニー2000パラリンピック男子車いすバスケットボール日本代表キャプテン)は、子どもたちに「何かをするうえで困ることを『障がい』とするならば、それは人や社会がつくってしまっているもの。でもそれなら、障がいをとりのぞくことができるのもまた人の力なのではないか」というメッセージを伝えました。
根木さんにまた学校に来てもらえるように何かしたいと考えた子どもたちの中から、「もしこの学校に車いすで来るのに『障がい』となるものがあるのなら、それをとりのぞきたい」という意見が出ました。
その思いから、それまでは学校になかった車いす用のスロープを作ろうということになり、当時の6年生が卒業制作として、スロープの制作に取り組みました。
2022年9月、啓明学園で実施された2回目の「あすチャレ! スクール」の授業のあとに、根木さんはそのスロープを作った子どもたちと再会しました。この日の会場となった体育館の入り口には、子どもたちが制作したスロープが設置されました。
そして、啓明学園での3回目の授業が2025年2月に行われました。
プログラムは、(1)パラアスリートによるデモンストレーション、(2)パラスポーツ体験、(3)あらゆる学びのヒントが詰まったパラアスリートの講話の3部構成です。
啓明学園では、90分間の授業の中で、まず、根木さんによる車いすバスケットボールのシュートなどのデモストレーションが行われました。難易度の高いスリーポイントスートをはじめとした華麗なプレーを披露し、会場は大盛り上がり。
そのあと、車いすバスケットボールで使用する競技用の車いすを実際に使った車いすリレーを行い、子どもたちは、競技用車いすの操作を体験。最初は思うように動かず、苦労する様子も見られました。
全員が操作を体験したあと、代表児童10名による車いすバスケットボールの試合が行われ、子どもたちはプレーに応援に大盛り上がり!

最後は根木さんによる講話が行われました。

根木さんは高校3年生のとき、突然の交通事故で脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされました。しかし、車いすバスケットボールと出会い、友人やチームメイトの支えを受けながら、努力を重ねました。その結果、日本代表選手としてパラリンピックに出場することができたという話から、さらに、2年前出会いがきっかけで制作された啓明学園のスロープのエピソードにも触れました。
プログラムを受講した児童は、「もともとバスケットボールをやっていますが、車いすバスケットボールでは、いつものようにドリブルしたり、リターンしたりすることが難しかったです。根木さんのチャレンジしたことや、周りや友だちの支えがあったことがすごいと思いました」と感想を話してくれました。
2022年の「あすチャレ! スクール」とスロープを制作したときの6年生の担任であり、今回も6年生の担任を務めている天野美穂先生は、「障がいを取り除くのも自分たちという根木さんのお話が今回もありましたが、2年前にスロープを作った子どもたちも、障がいを取り除くのは私たち、『あ、そうだ!』と思ったらやらずにはいられないから、自分たちでスロープを作りたいといって始めました。多様な背景がある子どもたちが多く、日常から得意なこと、苦手なことがあることが当たり前の環境のなかで、障がいのある・なしも当たり前のことと感じることが大切だと思います。子どもたちが世界に出ていったときに、障がいのある・なしとか、外国人だからなどということではなく、みんなが相手を自分事として思いやり、人と人が出会ったときに『この人のことを応援したいな』、『何かできるかな』と思いあえるような相手や仲間が増えていくように育ってほしいなと思います。そういう学びとして実際に体験したり、根木講師に会って声を聞くことができたりしたので、今後どこかでふとした瞬間に、今日のことを思い出してくれればと思います」と話してくれました。

根木さんは、最後にこう結びました。
「パラスポーツや車いすユーザーである自分を通じて、『違い』ってあるよね、それぞれにみんな違うよね、と自分事としてとらえてほしいと思います。『あすチャレ! スクール』は2016年から始めていますが、東京2020パラリンピックを契機にみんなの視点も変わってきて、障がいのある・なしって難かしいことじゃないよね、そうだよね、と言ってもらえるようになってきたと思います。リバースエデュケーションといいますが、家に帰って『今日、車いすバスケの人が来てね、障がいって社会がつくってるって言っててね』と、子どもたちが自分たちの言葉で家族に伝えることが大切です。先生たちもいっしょに学んでいただけると良い、と思っています」

「あすチャレ !スクール」は、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校向けのパラアスリートから学ぶ、90分間のパラスポーツ体験型出前授業です。車いすバスケットボール、車いす陸上、ゴールボールの3つのプログラムがあり、2016年の開始から2024年度3月末までに、全国で2,607回実施、29万人以上の児童生徒が参加しています。パラリンピック出場経験者や現役パラアスリートなど、経験豊富な講師陣が、パラスポーツの魅力や障がいへの理解、チャレンジ力などについて、経験談とともに子どもたちにお伝えします。
日本財団パラスポサポートセンター「あすチャレ! スクール」事務局
電話 03−6807−4418 (※電話受付:平日10時〜17時)
FAX 03−6807−4988
メール school@parasapo.tokyo
住所 〒107-0052 東京都港区赤坂1−2−2 日本財団ビル3階
「あすチャレ! スクール」公式サイト https://www.parasapo.tokyo/asuchalle/school/
制作協力/写真提供:日本財団パラスポーツサポートセンター
記事:デジタル写真ニュース編集部 吉岡