【お気に入りの作品について】
──お気に入りの作品を教えてください。
「自分の最高作品は3つあります。『注がれるコーヒー』、『味付け海苔』、『カステラになりたい木の気持ち』ですね。『コーヒー豆』を作って1年後に、自分が『コーヒー豆からレベルアップをしたよ』という表現として作ったのが『注がれるコーヒー』です。あの作品は自分で写真を撮影したときに、結構衝撃があって。『コーヒーじゃん!』みたいな。今までにない木彫りになったという満足感があったんですよね。『味付け海苔』は、僕が展覧会などを開くようになって、来たお客さんにただ見て驚かれるよりも何かアクションを入れて楽しんでもらいたいなという気持ちがあって、写真を撮ったときに完成するおもしろさを体感してもらえたらいいなと思って作った作品です。本当に完璧に表現できました。目で見たら木彫りってわかるのに、写真に撮ると透明なフィルムに入った味付け海苔に見えちゃうっていうギャップは、会場に来たからこそ楽しめるおもしろさっていう。それを表現できたのですごく気に入っていて。『カステラになりたい木の気持ち』は、自宅にあった角材がちょうどカステラの切る前のサイズ感で、『これカステラじゃん』って思って。この木が自分から『カステラになりたい』と思ったら、どんなふうに変化していくのかなと思って、擬人化的な表現に挑戦しました。自分からやわらかくはがれていって、カステラになっていくっていうのがおもしろいんじゃないかなと思っています。木の素材感と食べ物の質感を融合できたなっていうので、すごく気に入っています」



──たいへんだった作品はありますか?
「たいへんだったのは『納豆』ですね。粒の数がすごく多くて、重なっているんですよね。だから、ちょっとでもずれると作品として成り立たなくなってしまう。あとはねばねば感をどう表現するかという部分。ただ彫っただけじゃ完成せず、そこに着色の技術をとり入れたことで完成したという意味で、すごく難しかったけれどおもしろかった作品です。実は初期作品なんですけれど、木でできなさそうなものを作ったらみんなおもしろがるかなって思って作ってみたのが、納豆だったんです。木の感じがないですよね」

───もしかしてパックに入っている納豆の数まで再現していますか?
「豆の数もちゃんと数えてコピーします。あれは豆の粒を下書きして彫っています」
【今後の活動や目標について】
───2023年12月に、みんなでわいわい楽しめる木彫りクイズ絵本『どっち?』(講談社)が出ました。
「この絵本は食べ物が並んだ写真の中から、木彫りでできた食べ物を見つける木彫りクイズ絵本です。SNSで木彫りクイズを投稿したことがきっかけです。本物の中に木彫り作品を混ぜて、『どれが木彫り?』ってクイズなんですけれど。そうしたら、みんな答えたがるんです。『これが木彫り!』『あれが木彫り!』って。木彫りクイズっていちばんコミュニケーションがとれる題材なのかなと。木彫りクイズを本にすることで、いろいろな人と楽しんでもらいたいなという気持ちがあります。SNSでは僕が出題者なんですけれど、本になれば、誰でも出題者になれますよ。みんなが僕の「どや〜っ」って気持ちを体感できるんです。結構気持ちいいんですよ、みんなが間違えてくれると(笑)。そういうコミュニケーションが増えていったらいいなあって」

──この絵本の出版を記念した展覧会も開催されましたが、やはり展覧会でも、お客様の反応を見たりするのですか?
「見ていますね。こっそりのぞいています。展覧会でみんなの反応を見るのが楽しくてしょうがないんです」
──展覧会での印象的なできごとはありますか?
「木彫りの作品を作って持ってきてくれた小学生がいます。バウムクーヘンをひとかけら作って持ってきてくれました。上手に作っていましたね。これもうれしいことです。そういう仲間も増えて欲しいし。木彫りじゃなくても、僕の作品を見て何か作りたくなったとか。ハムスターを粘土で作ってくれた女の子がいて、それも持ってきてくれたんですけれども、僕の『つままれた豆大福』という作品を見て、自分の飼っているハムスターをつまんでいる状態を思いついて粘土で作ってくれたんですって。そういうのもうれしいです」
──これからやってみたいことはありますか?
「1つやってみたいのは、全国を展覧会で回って、みんなに直接木彫りのおもしろさを目で見て体感してもらうこと。あとは、僕の木彫り作品は正直言語のいらないアートだと思うんです。誰でも楽しめるし、誰でも理解できるようなアートなので、国とか、人種とか関係なく楽しんでもらえたらいいなあと思っているので、ちょっとずつ世界に向けて発信していきたいです。でも世界の食べ物となると、これだっていうのを見つけて、本物を手に入れて食べないといけないから、1回海外旅行をしないといけないですけれどね。木彫りって本当にすごく可能性があるんですよ。木も食べ物も誰もが知っている素材ですから」
─最後に読者である子どもたちにメッセージをお願いします。
「僕は今、めちゃくちゃ楽しくてしょうがないですよ。人生でいちばん楽しいですね。子どものころは、こんな人生をまったく想像できなかったですね。僕は作品を作りたいというよりも、コミュニケーションを作りたいという思いが強くて。それが今、人生の中ですごくいちばんできているから、すごく楽しいし、幸せです。だから、とにかく今を楽しくってことですね。僕はそれをずっと大事にして生きてきて、ここにたどりついているので。本当に将来何があるかわからない、想像もできないから、とにかく今を楽しく生きていれば、それが周りにも伝わって、周りも楽しくなるし、自分の未来もどんどん明るくなる。だから、まずは今が楽しくなるように進んでいってほしいなって思っています」

キボリノコンノさん プロフィール
木彫りアーティスト。1988年生まれ。2021年に趣味で木彫りをはじめ、「あっと驚くもの」をテーマに作品を制作、SNSで発表し続けている。数多くの作品がテレビやインターネットで話題となり、2023年からプロの木彫りアーティストとして本格的に活動を開始。全国各地で展覧会やワークショップなどのイベントを開催。
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(取材・撮影日:2023年11月12日 少年写真ニュース編集部 吉岡)