「少年写真ニュース」2025年2月28日号では、江東区立明治小学校(東京都)で行われたわかめ授業とわかめ給食の特集をしました。
江東区立明治小学校の栄養教諭、御子貝牧子先生に、お話をうかがいました。

──今日の献立は、わかめ博士によるわかめ授業が実施されたということもあり、「わかめ給食」でした。わかめごはんをはじめ、くきわかめのサラダ、メカブのみそしる、そしてサバの西京焼きと、わかめづくし! くきわかめのサラダは食感も良く、いろどりもきれいでした。
「出前授業で、わかめの葉とくきわかめとメカブの3種類が紹介されることが事前にわかっていたので、そのすべてを入れる献立にしたいと思いました。もともと、くきわかめをたっぷり使った『くきわかめのきんぴら』というメニューがあり、明治小学校では人気です。ですが、今回はより見た目のままというか、くきわかめの色や食感をそのまま提供したいと思って、きれいな緑色の状態で提供できるサラダにしました」

──わかめごはんは、みんな大好きだと言っていました。
「白いごはんにおかずを組み合わせて食べることが苦手なのか、ごはんが残ってしまうことがあるのですが、わかめごはんは人気です。今日はごまを入れましたが、しらすを入れることもあります」
──サバの西京焼きも出ていましたが、みんな上手に食べていて、ほとんどの子が皮まで残さずに食べているのには、びっくりしました。
「調理方法や魚の種類によって、魚の皮を食べる、食べないはそれぞれです。サバは比較的薄い皮で、食べやすいと思います。サバは給食でよく取り入れていますが、脂がのっていて皮もおいしいですよね。子どもたちに、『魚には、みんなの体に必要な栄養があるから給食に出すんだよ』と伝えています」
──メカブのみそしるも飲みやすくて、おいしかったです。
「今年初めて、乾燥メカブを使いました。いろいろな資料やホームページを確認して、みそしる一人分で、どれくらいの分量が適当かを考えました。納品されたものを実際に食べてみたら、塩分も少し感じたので、みその加減が気になるところでした。そのため、みそを全量入れる前にメカブを入れて、塩加減をみました。煮えすぎるのを避けるために、調理スタッフの方には、私が行くまでメカブはみそしるに入れないでほしいということを伝えて、自分の目の前で入れてもらってから味をみて、みそを全量使用するかを判断しました」
──こんな給食を食べることができる子どもたちはとても幸せだと思います。
「きらいなものがある児童もいるんですが、『給食だと食べられた』とか、『今日のだったらいけたよ』みたいな、そういう声が子どもたちから聞こえてくると、『それでいいんだよ』と伝えています。きらいって自分で決めないで、こういう料理だったら好きだなというのを見つけられれば、きっといろいろな食材から栄養がとれる大人になれますよね。きらいって決めつけてしまうと、大きくなったときに、自分からは手に取らないです。給食で『苦手なものも、こんなふうに料理したら食べられた』と発見できたなら、それでいいんだよって。一口でも食べられたら、味をみることができたのなら、とてもうれしく思います。子どもたちの反応は、仕事をするうえで糧になるというか、もっと良くしていこうという気持ちを奮い起こすきっかけになっています。それもあって、毎日教室に行って子どもたちと話をしています」
──給食の献立はどのように考えていますか?
「安全においしく提供することはもちろんですが、子どもたちにこの献立でどんなことを伝えるのかも考えて作ります。栄養価などの基準をふまえつつ、子どもたちの食べている姿について、イメージをふくらませながらメニューを組んでいきます。献立表を見て『これおいしそう!』とか、『早くこの献立の日が来ないかな』とか、そういうふうに思ってもらえるような給食を出したいなと思っています。和食や、ごはんの給食に力を入れていますが、そこにかたよることなく、いろいろな料理も取り入れています」
──課題などはありますか?
「食べ方は課題だと思っています。たとえば、おはしの持ち方などはくり返し伝えています。担任の先生と協力して指導することがポイントですし、家庭との連携も大切です。私は2023年から明治小学校に着任しているので、わかめ授業を行った5年生が1〜3年生のころは見ていないのですけれども、前任の栄養教諭が食育に力を入れていたことが今につながっていると思います。子どもたちはすごく成長しているというか、力をつけていると思うので、私もしっかりと取り組んでいきたいです」
──みんな給食を本当においしそうに食べていますし、「うちの学校の給食は本当においしいんだよ」って言っていました。
「それはうれしいです。5年生はもちろん、多くのクラスで給食を楽しい雰囲気でしっかり食べています」
──先生が教室を回ると、すぐに子どもたちが寄ってきますね。
「私が行くと、子どもたちは食べ物の話をしたり、『先生今度これ出してよ』とか、『今日のこれおいしいよ』とか、『おかわり持ってきた?』と話しかけてくれます。私は、子どもたちが栄養教諭を身近に感じ、食べ物や自分のことを気軽に話せる存在でありたいと思っているので、うれしく思っています」

──「先生これ出して!」というリクエストは実現したりするのですか? 「子どもたちの声から実現したものはいろいろあります。また『リクエスト給食』といって、投票して決めてもらう企画があります。
私はこの学校に来てまだ2年ですが、給食委員会が『リクエスト給食』を企画するにあたって、『御子貝先生はまだ出していないけれど、前の先生のときに揚ギョーザが出て、それをリクエストしたいけれども、今の1~2年生は食べたことがないからリクエストができない』と言っていました。
確かに、食べたことがない学年はそれを知らないわけですから、投票できないですよね。ですから、『投票の日が来る前に、1回揚ギョーザを出すね』と言って、先日揚ギョーザを給食で出しました」
──先生が好きな献立はなんですか?
「私は汁物やスープ系が好きです。だしにこだわって、つくっています。汁物やスープの献立で、だしをうまくとれたときは、子どもたちの反応はどうかなって気になりますね。汁物はメインというより脇役的ですが、自分が汁物好きなこともあり、気合が入ります。和風のだしは、かつおやこんぶだけではなく、家庭科で5年生がにぼしを使ってだしをとった週があったりすると、給食でもにぼしを使い、学習に合わせたりします。だしのこだわりや工夫は積極的に伝えています。子どもたちは、知識が入ると、より気をつけて味わうというか、ただおいしいだけじゃなくて、『いつもと何かちがうな』とひとくち目で感じてくれます。電子黒板を活用して、毎日の給食について発信しているので、担任の先生が活用しながら、日々の食育が行われています」

──だしにここまでこだわられるということは、もしかしてカレーライスもスパイスなどにこだわってらっしゃいますか?
「カレー粉も使いますが、ターメリックやクミン、シナモン、コリアンダーなどといったスパイスも合わせます。辛みのないスパイスをブレンドして使うことで、風味はあるけれど、辛くないカレーにしています」
──食育というところでのこだわりはありますか?
「食材が身近にあるのが当たり前、という子どもたちが多いと思います。毎日当たり前に出てきて、食べることができて、そういう中で、子どもたちと食材の大元になっている生産者のみなさんがつながる機会がすごく少ないと感じています。私たちがおいしく健康的な食事ができているのは、生産者のみなさんの努力があってこそなんだということを子どもたちに伝えたいという思いが常にあります。本物に出会う機会をつくることには積極的に取り組んでいます。今日のわかめ授業もそうですよね。海にはえている状態での本物のわかめは、見ることもさわることもなかなかできません」
──実際に生産者のみなさんとふれあうと、食材そのものの見方も確かに変わりますよね。
「そうですね。調理する前の本物を見せる、果物や野菜を調理する前に展示するなど、食べる前はこういうふうになっているんだよというのを見せられる場はできるだけ増やしたいです。学習は学習、給食は給食ではなくて、学習と給食をつなげていくことも、栄養教諭の職務だと思っています。給食は教育の中の一部として位置づけられているので、計画的に学習と関連させています。たとえば、給食でよく使う東京都産のこまつなも、2年生の学習のタイミングで取り上げます。日々の学習とのつながりを大切にしていることを校内で共有して、担任の先生たちからも情報をたくさんいただくようにしています」
──これからの目標などを教えてください。
「子どもたちが大人になってからも健康でいられるためには、成長期の食生活がとても大切だと思います。栄養教諭として、給食を通して食べることの大切さを伝え、小学校生活6年間の成長をサポートしていきたいです」
江東区立明治小学校 https://meiji-sho.koto.ed.jp
(取材・撮影日:2024年11月21日 少年写真ニュース編集部 吉岡)