20世紀を代表するスペインの巨匠、ジュアン・ミロ。
ミロの初期から晩年までをたどる大規模な回顧展が、7月6日(日)まで東京都美術館(東京都台東区上野公園)で開催されています。

■ ジュアン・ミロとは?

ジュアン・ミロ(Joan Miró, 1893–1983)は、スペイン・カタルーニャ州で生まれた、20世紀を代表する画家のひとりです。絵画をはじめ、彫刻や陶芸、版画、壁画など、さまざまなジャンルで作品を手がけました。
ミロの作品には、単純な線や形、記号のようなモチーフがよく登場します。赤や青、黄色などのあざやかな色づかいも特徴で、目にした人の印象に残りやすい作品が多いです。ミロは、現実のものをそのまま描くのではなく、線や色、形のバランスを大切にしながら、自分だけの表現を追求していきました。
1920年代には、フランス・パリで詩人のアンドレ・ブルトンらと交流し、「シュルレアリスム(超現実主義)」の動きにも関わりました。ただし、ミロ自身はどのグループにもとらわれず、自分のペースで独自のスタイルを築いていったとされています。
代表作には、<星座>シリーズ(1940–41年)や<カタルーニャ農民の頭部>(1925年)、<青 I, II, III>(1961年)、<絵画>(1933年)などがあります。晩年になると、壁画や彫刻といった大きな作品にも力を入れていました。
彼の死後の1975年には、その業績をたたえて、スペイン・バルセロナに「ジュアン・ミロ財団」が設立されました。生涯を通じて表現の可能性を広げ続けたミロの作品は、今も世界中の美術館で見ることができます。

今回の展覧会では、世界各国の美術館や個人コレクションから集められたミロの代表作が展示されています。特に注目したいのは、彼の傑作〈星座〉シリーズで、全23点のうち3点を一度に鑑賞できる貴重な機会となっています。これらは当時戦禍を逃れながら描かれたもので、夜空の輝きや音楽的なリズムを思わせる、ミロ独特の抽象表現が凝縮されています。

ミロの作品の魅力は、その自由な発想と、見る人の想像力を自然に引き出す表現方法にあります。人や動物のようで、そうとは言い切れない不思議な形や、記号のような線や点が多く登場する作品は、何を表しているのかを決めつけず、見る人自身の感じ方にゆだねられるのが特徴です。
また、赤・青・黄などの原色による鮮やかな色づかいや、単純な形の組み合わせによって、まるで音楽のようなリズムが生まれ、視覚だけでなく感覚にも訴えかけてきます。そこには、「こう描かなければならない」といったルールを超えた、表現の自由さが息づいています。
作品に答えや意味を求めるのではなく、観る者それぞれが「感じること」そのものを楽しめる、それがミロの作品の魅力です。
『ミロ展』
会期 7月6日(日)まで
会場 東京都美術館 企画展示室 東京都台東区上野公園8-36
時間 9:30~17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
休業日 月曜日、5月7日(水)(ただし4月28日・5月5日は閉室)
料金 18歳以下・高校生以下は無料・一般2,300円
※18歳以下、高校生、大学生・専門学校生、65歳以上の方、各種お手帳をお持ちの方は、いずれも証明できるものをご提示ください。
※土日・祝日のみ日時指定予約が可能です。当日券も館内で販売します。ただしご来場時に販売予定枚数が完売している場合があります。また、混雑時にはご入場まで時間がかかる場合があります。
公式サイト:https://miro2025.exhibit.jp
文・撮影 s.sato