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サンシャイン水族館(東京・池袋)では、国際的なSDGs週間に合わせて、9月28日(日)まで「サンシャイン水族館 SDGs WEEK」を開催します。
※SDGs週間:SDGsが採択された9月25日(GLOBAL GOALS DAY)を含む毎年9月末の約1週間のこと。SDGsへの意識を高め、行動を起こすきっかけづくりのため、世界中でイベントが開催されます。
「気候変動」が生き物たちに与える影響と現状を、特にケープペンギンやサンゴに焦点を当てて、解説パネルなどの展示を通じてわかりやすく説明します。

また、SDGsを身近に感じてもらうために、2023年5月から、魚の養殖と野菜の栽培を同時に行うことができる「アクアポニックス」の展示を開始しています。水槽ではレタスなどの野菜を育て、育てた野菜を飼育している生き物たちにえさとして与えています。「サンシャイン水族館 SDGs WEEK」の期間中はその様子をサンシャイン水族館の公式SNSで公開するそうです。
今回は、ケープペンギンの飼育スタッフの與倉陵太さんと、アクアポニックスの担当の三田優治さんに、お話を伺いました。
ケープペンギン:飼育スタッフの與倉陵太さんにインタビュー
アフリカ大陸に生息する唯一のペンギンであるケープペンギンは、サンシャイン水族館の屋外エリア、マリンガーデンの「天空のペンギン」、「草原のペンギン」の2か所の水槽で展示されています。

「天空のペンギン」は、ケープペンギンが、空を飛んでいるように見えるダイナミックな展示で、「草原のペンギン」では、野生のケープペンギンが生活する草原を再現し、ふだんの生活の姿を見ることができるようになっています。

━━ケープペンギンの生態について教えてください。
ケープペンギンは南アフリカで生活をしていて、寒い時期は5℃、暑い時期は30℃と、日本の夏ほど暑くはなく、日本の冬ほど寒くはない場所で生活しています。昼の間に海に出かけて狩りをし、夜になったら陸に戻って休みます。
━━サンシャイン⽔族館にはケープペンギンは何⽻くらいいますか? 中でも注⽬の子がいたら教えてください。
サンシャイン水族館では、約50羽のケープペンギンが生活しています。中でも「天空のペンギン」水槽の「おいも」は2歳、「草原のペンギン」水槽の「ぽてと」は1歳と年齢が若く、好奇心旺盛です。たまに虫が飛んでくると、必死に追いかけていますので、そういう姿もぜひ見ていただけたらと思います。
ペンギンたちは、フリッパー(翼)に個体識別用のリングをつけています。「おいも」は紫と黄色のリング、「ぽてと」は赤と黄色のリングをつけているので、注目してみてください。

━━ケープペンギンはサンシャイン水族館では1⽇をどのように過ごすのですか?
朝になったら目覚め、昼の間に3回に分けて魚を食べます。ふんなどは水できれいにする機械を使ったり、飼育スタッフが掃除をして、すみかなどが汚れ過ぎないようにしたりしています。ケープペンギンは、水族館で卵を産むこともあります。タイミングが合えば、卵を温めているシーンを観察することができます。夜になると眠るのは、ケープペンギンも同じです。
━━サンシャイン⽔族館のケープペンギンの主な⾷べ物や好物は何ですか?
主な食べ物はマイワシ、マアジ、キビナゴ、スメルト(ワカサギの仲間)です。好物でいうと、マイワシが好きなペンギンが多いです。
━━「天空のペンギン」「草原のペンギン」の展示の見どころは?
「天空のペンギン」水槽では、ペンギンを下から見上げるという、ほかではあまりできない体験をすることができます。まるで自分が海の中に入って、ペンギンといっしょにいるような気分になれるので、見上げて観察するのがオススメです。

「草原のペンギン」水槽は自然界の暮らしに近い状態で、植物が生えていたり、巣の中でペアが生活していたりするので、リアルな暮らしぶりを観察することができます。それぞれの展示を行き来しながら、余すことなく観察してみてください。

━━與倉さんにとって、ずばり、ケープペンギンの魅力とは?
ケープペンギンの魅力は、能力です。ペンギンは鳥の仲間なのですが、「鳥」と聞けば、空を飛んでいるイメージを思い浮かべる人が多いと思います。
しかし、ペンギンは、空ではなく、海で生きるために、さまざまな能力を身につけました。それは身体の形、重さ、呼吸など海に潜ることに特化したものです。
鳥だからといって、がんばって空を飛ぼうとするペンギンはいません。それぞれの持って生まれた能力をいかして生きていく姿がとても魅力的です。
━━今回、「サンシャイン水族館 SDGs WEEK」の展示で、⼦どもたちをはじめ、来館されたお客さまたちに伝えたいことを教えてください。
私たちは、生きている間にけがや病気をすることもあると思います。気候変動は、たとえるなら病気に似ているかなと思います。それも知らない間に進行して、「あれ、何だかおかしいぞ?」と思ったころには、かなりやっかいな状況になっているタイプの怖い病気です。
気候変動は目に見えません。ですが、ペンギンやサンゴといった海の生き物たちの数が減ったり、異常が発生していたりすることから気づくことができます。
みなさんには、目には見えないものを自然を通して感じるということ、そして将来のために何がいっしょにできるのかを考えること、そういったことを伝えていきたいと思っています。
展示では、実際にケープペンギンが暮らしている南アフリカから貴重な写真を送っていただき、それをパネルにしています。なかなか見ることができない、現地の気候変動の影響を受けているペンギンの姿を、写真を通して伝えたいと思っています。ほかの展示も趣向を凝らして、表現方法を一ひねりしています。ぜひ、現地で体験してみてください。
気候変動は、今日取り組んで、明日解決できるというものではありません。もしかしたら、私たちが生きている間には、今していることの答え合わせはできないかもしれません。それでも、今とこれからを生きる子どもたちが、自然とうまく共生していけるように、そんな将来の一端を担うために、このような取り組みを続けていきます。
アクアポニックス:担当の三田優治さんにインタビュー
アクアポニックスは本館2階、「水辺の旅」に展示されています。
持続可能な取り組みの1つ、野菜と魚の飼育を目指す「アクアリウムファーム東京プロジェクト」として、2023年5月から展示が始まりました。水槽では、クラウンローチやブラックゴーストなどの淡水魚を飼育し、レタスなどの野菜を栽培しています。


野菜を栽培するときには、よく育つように野菜の養分となる肥料をまきます。これらの肥料には、野菜の成長に欠かせない窒素やリンなどの成分が含まれています。
生き物はごはんを食べたあとに、ふんや尿を出しますが、これらにはアンモニアや有機リンが含まれていて、それをろ過槽に生息しているろ過細菌という生物が分解することによって、窒素を含む硝酸塩やリン酸塩に分解され、植物が栄養として利用することができるようになっています。
こうした循環を1つの水槽で行い、むだなく野菜と魚を育てることができるのが、アクアポニックスです。こうした資源の循環の仕組みがわかるように、サンシャイン水族館では、生命のつながりを6つの水槽をつなげることで表現しています。

━━子どもたちに向けて、「アクアポニックス」についてもう少し詳しく説明をお願いします。
水槽で魚の飼育をしつつ、魚たちが排泄したふんや尿などを利用して、レタスなどの野菜を育てる方法です。

━━アクアポニックスを実施することになったきっかけなどはありますか?
水族館での生き物の魅力発信に加えて、何か新しく取り組めないかと考えていたときに、持続可能な栽培・飼育方法として注目されているアクアポニックスについて知りまして、水族館で展示することになりました。
━━展⽰のポイントなどについて教えてください
さまざまな野菜を栽培することができますが、みなさんになじみのある野菜のレタスを中心に栽培を行っています。季節によってイチゴなど、ほかの野菜や果物を栽培していることもありますので、育てているものにも注目してください!

━━育てた野菜はどんな⽣き物のえさになりますか?
植物を食べるイグアナやリクガメです。今回、「サンシャイン水族館 SDGs WEEK」の取り組みとして、アクアポニックスで育てた野菜を食べる様子などをみなさんにSNSで披露するので、どんなふうに食べているのかをぜひご覧ください。

━━たいへんだったことや、苦労したことはありますか?
実は、アクアポニックスは、屋外や太陽光を利用したビニールハウスで行うことが多いんです。室内で栽培を行っていく中で、植物の成長に適した照明や、水などの調整に苦労しました。
━━ちなみに育てた野菜を食べたことはありますか?
レタスを食べたことがありますが、とれたてでおいしかったです!!

━━今後の⽬標やチャレンジしたいことなどを教えてください
野菜の栽培に関する照明の改善など、まだまだできることがたくさんあるので、可能性を広げて、さまざまな野菜が栽培できるようにチャレンジしていきたいです! また、近年、注目を集めているアクアポニックスのシステムについて、ご来館いただいたときには、ぜひじっくりと見ていただけたらと思います!
サンゴについて

また、サンゴに関しては、沖縄県恩納村の協力のもと、サンゴ礁の再生を願い、サンシャイン水族館で育て、ふやしたサンゴを海へ還す「サンゴ返還プロジェクト」と、沖縄の海でサンゴを育て、産卵によりサンゴをふやす「サンゴ礁再生プロジェクト」の2つの活動を軸にした、「サンゴプロジェクト」を行っています。
「サンシャイン水族館 SDGs WEEK」期間中には、高水温による白化現象で、深刻な被害を受けているサンゴ礁の現状を、解説パネルで紹介します。
〈おまけ〉
2025年6月15日に誕生し、屋外エリアにある、マリンガーデン「アシカたちの砂浜」水槽で一般公開されている、カリフォルニアアシカの赤ちゃん「ジョイ」は、生まれてから3か月がたち、すくすくと元気に育っています。かわいらしい姿を、ぜひ見にきてください!

サンシャイン水族館
所在地:
東京都豊島区東池袋3−1
サンシャインシティワールドインポートマートビル・屋上
営業時間:10時〜18時
※最終入場は終了30分前
※季節・曜日で変動
入場料:大人(高校生以上)2,600円〜、こども(小・中学生)1,300円、幼児(4歳以上)800円
※変更の場合あり
問い合わせ先:サンシャイン水族館 03-3989-3466
※土日祝日および特定日は、入場制限を行っておりますので、事前予約(日時指定・日付指定)が必要です。
詳しくは水族館ウェブサイトをご確認ください。
https://sunshinecity.jp/aquarium
(撮影・取材:2025年9月16日「デジタル少年写真ニュース」編集部 吉岡)

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