今年で開催7回目を迎える「Minecraftカップ」。日本のみならず、海外も含め、18,000人を超える応募者からエントリーがある作品コンテストです。「教育版マインクラフト」で作った作品で、構想力や表現力を競い合います。参加対象は、小学生から高校生まで。
2025年度の作品テーマは、「未曾有の災害から人類の命をまもれ〜レジリエンスを備えたまちづくり〜」で、「まちづくり部門」と「たてもの部門」の2部門で作品を募集し、9月4日(木)18時59分まで受け付けます。

Minecraftカップ2021年全国大会(第3回)で「インプレス子どもとIT賞」を受賞した「チーム逸般人」の得丸創生さんに、Minecraftにはまったきっかけや、参加した理由、たいへんだったところや、やりがいなどについてお伺いしました。

──まずはMinecraftとの出会いについて教えてください。
小学校2年生くらいまで遡るのですが、友だちが「これおもしろいね」ってiPadにMinecraft(以降マイクラ)を入れて見せてきたんですよね。2014年だか2015年くらいで、ちょうどマイクラが流行し始めたころだったんです。それで、すごくおもしろくてはまったんですよね。レゴ®︎って、あるじゃないですか? マイクラは、無限にレゴ®︎のブロックがあるようなイメージで、楽しくて。そこから、今まで10年ずっとやっているわけです。すごく単純な動機なのですが、レゴ®︎だとブロックがなくなってしまったら作れないんですけれど、マイクラだったらそれが無限に作れるんですよ。当時としては、「なんだ、これ? すごいぞ!」っていう。小学3年生のときは、それこそずっとやっているような感じだったのですが、実は不登校になりまして。そもそも、あんまり学校が好きじゃなかったというのもあって、3年くらい学校に行ってなかったんですが、マイクラはずっとやっていて。中学1年生くらいまで、マイクラを普通にゲームとして楽しんでいる感じだったんですけれども。だから、小学5年生くらいからはフリースクールにも行っていたのですが、そこにはマイクラが好きな子がいっぱいいたんですね。そこでたくさんの人に出会って、みんなで遊ぶようになって(そのメンバーが後でまた出てくるのですが)、とりあえず、「マイクラ楽しい!」とかいって遊んで、ときには誰かが作った建物を壊してけんかして──みたいなことを、ずっとやっていましたね。
──「Minecraftカップ」に応募したときには中学生だったと思いますが、中学時代はどんな感じだったのですか?
公立の中学校に行ったのですが、そこが変わった学校でして。校長先生もちょっと変わっていて、廊下にみんなで自由に過ごせるスペースがあったり、あのころではまだめずらしい3Dプリンターも置いてあったりしたんですよ。そこで「マイクラもやりたい」とやっていたら、「マイクラやってるんだ」って感じで、ある1人と出会いまして、その人もあとで出てくるんですが。ある日突然、親が「海外に行ってみない?」って言ってきました。親も親で、よくそういうこと言い出すなって思いましたが、当時の中学校の校長先生に相談をしたら「じゃあ行ってくればいいじゃない」って言ってくれて、学籍もちょっと置いておいてくれることになりました。「無理だったら戻ってくればいいんだよ」って、海外に留学のような形で行くことになったんです。場所はマレーシア。日本の学校は勉強に使う時間が多いんですけれども、マレーシアにある学校って、日本ほど学校の勉強に力を入れていないところが多いんですよ。逆に、むしろ自由な時間ができたというか。ただ、それが2020年だったんです。新型コロナが来て、学校に行けなくなり、家での時間が余ってしまうので、そこでまたマイクラを始めたんですよ。で、日本のフリースクールや中学校で出会った仲間と「なんかMinecraftカップってあるんだけれど」って、みんなでワールドを作って応募してみようかという話になって。
──得丸さんは海外で、ほかのメンバーは日本で参加ということですか?
互いの連絡先は知っていたので、連絡をして、「じゃあオンラインでやらない?」って、始めたんですよ。時差も1時間くらいですし、全部オンラインでやろうって。
──応募する作品は、どのように作っていったのですか?
とにかく「未来の町」ということがMinecraftカップ側から与えられたテーマだったので、「どんなんだろう?」と考えましたけれど、実は当時、何も思いつかなくって。とにかく「未来」ってところから自分たちが思いつくもの、作りたいものをどんどん作っていこうという発想になったんですよね。なすがまま、任せてみようという感じというか。なんとなく未来のまちってこんなふうじゃないかなっていう、アイデアだけで作っていたんです。
──作る前にあれこれ考えてから実行するという感じではなかったんですね。
マイクラって、「作っては壊して」という作業が、本当に気軽にできるんですよ。たとえば工作とかだったら、しっかり考えてミスを起こさないように作るっていうことが多いですけれども、マイクラってミスを起こしても、別に壊して置き直せばいいので、どれだけ失敗してもいいし、当時はコロナ禍だったので、時間もたっぷりあるんだから、とにかく手を動かせと。「どうせ失敗しても、また作り直せるからいいよね」っていうふうに作っていきました。思いついたことをどんどんやって、いろいろ固まってきて、やっと「私たちが考えた理想の街〜15年後〜」というタイトルがついたんですよ。
──なぜ「15年後」に?
SDGsの目標を達成する2030年と年が近いのと、そのころ、Minecraftカップは4年くらい連続でSDGsが入っていたので。とりあえず作ってみて、似たようなことを考えている人がいないだろうかってインターネットとかで調べてみると、なるほど、自分たちがやっていたことは、実際に世の中でこういう取り組みがあるんだっていうことに気づいて、それをあとから混ぜて。そうすることでわからなかったSDGsがちょっとわかってきたというか。未来も、自分たちが求めている未来であれば良いわけで。タイトルが「私たちが考えた」と言っているくらいですから、自分たちの理想なら、それでいいって。
──オンラインでのやりとりがメインとのことでしたが、お話を聞いていると、すごくスムーズに進んでいったような印象を受けます。作業をしていく中で、けんかをするようなことはなかったのですか?
建物などを作るときには、ある程度は認識を合わせるために、「こんな建物ってあるよね」と、事前にみんなで写真などの情報を共有しておきました。二人で同じ建物を作ると、細かいところが違って衝突するので、一人建築物一つみたいに決めて作りました。だけど、全部オンラインでやっていたので、意見の食い違いはめちゃめちゃ起きました。マレーシアと日本で電話をしながらコミュニケーションをとって作業をするという感じなんですけれど、毎日くらいのレベルでぶつかっていましたね。毎日のようにぶつかって、「もう二度といっしょにやらない!」みたいな感じになるんですけれども、中学生なので、次の日になるとケロッとして、何事もなかったように戻ってくるみたいな。自分のイメージと誰かのイメージが合わないと、「自分が思い描いていた景観を乱すな!」とか、「自分が作ろうと思っていた場所に何か知らない建築物が建っている! 俺の土地を返せ!」とか、現実のまちづくりみたいなことが起きていましたね。「俺が作ろうと思っていた山なのに、なんで先に作っちゃったんだよ」みたいな、土地争いが起きることもありました。
──作品で特にこだわったのは、どんな部分ですか?
チームメンバーに聞いたら、多分「全部こだわっているから、特別にこだわったところはない」って言いそうなんですけれど、個人的には電車が動く装置を作っていたり、現実にある建物をオマージュして作っている建物とかがあって、実際に街中にあるタワーはマレーシアにいたときに、自分が住んでいた場所にあったペトロナスツインタワーっていう石油会社のタワーがあるんですけれども、それを「石油じゃなくてエコの象徴にしようぜ」とか言って、建物の素材を全部木に置き換えてタワーを作っていて。結構現実にある建物とか、誰かが考えた建築物とかは、かなり参考にしつつ作りましたね。自分たちが見ても、妙に現実感がありそうだなって。いや、でもすごく遠い未来なのかな、どうなんだろうっていう建物になっていって。15年はあっという間ですよね。みんな未来を描いているから、未来っぽいといえば未来っぽいんですけれど、今の現実の街のごちゃっとした雰囲気があるみたいな感じに仕上がりました。ある種リアル、みたいな。時間もたっぷりあったので、計画倒れするわけもなく、みんなが作りたいものを作れたんですよね。
──作品ができるまでに、どれくらいの時間がかかりましたか?
当時コロナ禍だったこともあって、1日あたりの作業時間はすごく長かったんです。実は応募を決めたのがかなり遅くて、実質3か月くらいで作っています。学校のグループだったら、きっと1日1時間とかだと思いますが、あの頃はみんなで1日8時間とかやっていました。そもそも出場経験がなかったので、計画性などのスキルも自分でやりながらどんどん育てていく感じで、何もわからない状態から、まずはとにかく手を動かす感じです。すでに出場経験があるのなら、計画して作業をしたほうがいいと思います。
──作品ができあがったときには、手応えはありましたか?
チーム全員、これは絶対審査に通るだろうって、自信はあったと思いますよ。明らかに何が良かったのかはわかりませんが、謎の絶対的な自信があって。自分たちの作品が、いちばん楽しそうに見えたんですよね。でもその一方で、ほかの人たちの作品をよく見てみると、「向こうのほうがいいじゃん」なんて思ったりして。いい意味で、いろいろな人の作品に刺激されますよね。「このワールドに自分も入ってみたいなあ」とか。参加している人は、みんな互いにそう思っているんじゃないかと思います。どのワールドにもいいところがあるので、「自分たちの作品のほうが絶対上だけど、あっちのこの部分がいいから今度まねしてみよう!」みたいな。作品を紹介する動画やプレゼン資料も提出しないといけないのですが、そのセンスだったり、自信満々にプレゼンをしていたりするのを見ると、「すごいなあ」って単純に思いました。ぼくたちは、動画やプレゼン資料も、オンラインで話しながら作りました。役割分担をして、編集する人、撮影する人とか分けていました。ぼくは動画を編集する人だったのですが、最終審査の直前にたまたま日本に帰ったときがあって、動画編集の仕事で、録音をするためだけに、メンバーの家に押しかけたんですよね。それが大会参加期間中、メンバーに唯一直接会った機会で、本当に一瞬だったな。
──そして「インプレス子どもとIT賞」を受賞します。
それまでは自分の作品が誰かに認められたことがなかったと思うので、すごくうれしかったです。そこから今に至るまで、Minecraftカップがすべてのきっかけになったといっても過言ではないですね。いろいろなところがつながって、今に至るので。初めて賞をもらった大会なので、知り合いも増えましたし、同世代が多いですけれど、人とつながるという点でもきっかけになりました。大人たちともつながる機会もできましたし。
──具体的にはどのような広がりが生まれましたか?
Minecraftカップに参加して変わったことというのは、すごく大きくて。それまではゲーム大好き少年みたいな感じだったのですが、誰かに作ったものを認めてもらえることが、すごくうれしかったです。そこからいろいろな人の紹介を経て、マレーシアでオンラインでマイクラのプログラミングを教える先生になったのですが、子どもの生徒が3人くらいいて、3人同時に聞いてくるんですよ。自分で同時に3人の相手ができなくて、ちょうどそのときにAIが出てきたので、「AIにやってもらってみたらどうなるかな」って急に思いついて、教育用のソフトウェアを作ってみようと思ったんですね。そもそも技術がなかったのですが、自分でもいろいろ作りたいなと勉強して、「未踏ジュニア」というクリエーター支援プログラムに応募しました。そうしたら通って、今ではアプリを一人で作れるようになりました。日本に戻ってからは、リアルなところにボランティアで行ったり、それとは別でお金をもらう仕事もしていたりと、いろいろやっています。
──自分にない技術は誰かに教わったりしたのですか?
必要性がないのに学習するということに、自分はあまり身が入らない人間なので、プログラミングのスキルなども最初は全然やる気がなかったんですけれども、それが必要になった途端に、「やばい!」ってなって、自分で猛勉強しました。学び始めて、「これ、思ったよりも楽しいかも」って。普通に独学で全部やっているんで、お金はかかってないです。ゼロ円です。Minecraftカップで提出するときも、全部無料で使えるソフトを探して使っていました。

──改めて、Minecraftの魅力について教えてください。
やるたびにいろいろと新しいものを見つけられるので、楽しいです。ただのゲームかもしれないですけれど、作ったものをもしかしたら誰かに見せるとか、動画を作るとか、発表するとかもあるし、あとはマイクラの中にゲームを作って、ほかの人に遊んでもらうとかもできます。本当にいろいろな遊び方ができて、なんなら友だちをつくる方法としてマイクラを使ってもいいと思うんですよね。マイクラはいろいろな人が集まって、いっしょに何かできます。ほかにもそういうゲームはありますが、マイクラはできることが本当に自由。マイクラの仮想空間上に、ただ友だちと集まったりすることもできますし。
──チームのメンバーとは、今も仲がいいのですか?
今もメンバーは仲がいいです。昨日も電話していました。自分自身は、今では、マイクラを作る側というより、教えたりもするようになりましたし、マイクラから離れて違うことをやっているメンバーもいます。当時はマイクラだけでしたが、今はそれ以外も始めようって。
──「マイクラ」の存在自体が、変わってきたということでしょうか?
自分自身、小中高でやっていたマイクラと今やっているマイクラって違いますね。できあがるものも、何か違うんですよね。大人がつくるものって妙にリアル過ぎるっていうか、現実感があるものが多いんですけれども、子どもがつくるものって、それからちょっと離れているというか。自分も今作っているのを見て思うのですけれども、あのころとちょっと変わったなあって思ったりします。いろいろなものを知り過ぎてしまったからかもしれないですけれども、何も知らないで手探りだからできるものもあるんだと思います。そういうことを経験してもらうという点では、Minecraftカップはすごくいいよなって思います。
──最近はどんな感じですか?
今年の9月から大学に入学するんですけれども、それが今の直近のやることです。Minecraftカップのお手伝いもしていて、実際に学校に出向いたりするなどもしています。趣味として、相変わらずマイクラもやっているし、アプリを作ることもやっています。アプリ開発の点では、世の中がAIで変わり過ぎているので、毎月世の中のいちばん新しいものを追っていくのに疲れる、みたいな感じにはなっています。自分の下の世代もみんなそんな感じなので、ひと月前と今では違うツールがあるって状態になるので、今年のMinecraftカップとかでは、AIを使い倒した人が出てくるのではないか。ぼくたちのように、先生がいないような場合でも、よりやりやすくなったというか。自分たちのころは、調べるのに時間がかかったのでたいへんでしたけれど、今はどこからでもアクセスできるし、聞けば答えてくれるから、調べるための時間も減っていると思います。自分もプログラムを書いているときに、半分くらいAIに書いてもらって、それを確認して「これでよし!」って。これってプログラマーなのかなとも思いますが、周りもそんな感じです。AIは問題もつきものですけれども、世の中どんどん変わるから、それにもついていかないといけないと思います。
──将来の夢や目標を教えてください。
「将来どうなりたいですか?」って大学入試のときも聞かれて、すごく悩んだんですけれど、大学ってすごく人がいるじゃないですか? その人たちとのつながりをつくることは、まだオンラインではできないと思っていて、結局そこが大学に行くいちばんの目的なのかなって思っています。今は全部ネットでできるので、それをうまく使って、あとはどんどん人とつながっていくということだけを自分は考えるようにして、やりたいことをやっていこうって。機会を得るっていうところです。どうなるかはわからないけれど、起業とかしているのかな。必要性があれば、それを始めているでしょうし。環境が大きいのかな、かなり。自分があんまり外に出なくなったときに、家族がいろいろなものを紹介してくれたというのもあるし、マイクラ好きだったのも、そういうきっかけからですし。きっかけさえあれば、自分の好きなことをできるから、今はいいのかな。24時間ずっと勉強しているのがいいというわけではないと思いますし。自分はマイクラで徹夜していたので、徹夜する対象が違うだけ。それを認めてくれる人がいるのが大きかったですね。そう思うと、環境はすごく恵まれている気がします。英語は使うので、英語の勉強はちゃんとしていて。英語を覚えられたのはすごくよかったですね。この間もアメリカに行って、イベントに登壇する機会も得られました。アメリカには行きたいんですよね。大学院くらいで、アメリカに行こうかなって思っています。自分は運に恵まれていると思います。新型コロナとかもありましたけれど、そこにMinecraftカップに十分に時間を使える環境があったりしたので。とはいえ、挫折もしますし、今でも一喜一憂しますよ。いつか、自分が作ったものをみんなに使ってもらえるといいなっていうのが、今の目標です。
──最後にMinecraftカップに参加する、もしくは参加しようと考えている子どもたちに向けてメッセージをお願いします。
Minecraftカップは、マイクラだけじゃなくて、それ以外のものも見つける良い機会になるので、プロジェクトを通していろいろなことをやることにはなりますが、挑戦してみるのは本当にありだなって思います。マイクラ以外のことに触れるにも、いいチャンスです。自分は大会が終わってから、いろいろな機会を得ることができました。あとは、みんなで取り組むっていうところでは、自分はそれが初めてだったからということもありますが、何かをみんなで作るという体験はすごくよかったです。Minecraftカップの魅力って言い始めると長くなりますが、自分が変わったポイントがそこなので、勧めたいというのもあります。自分の作った作品を発表するという機会は、何か特定の教科、国語とか算数でも大会はあるとは思うのですが、それと似たような共通点はあると思いますし、それこそ学校とかプログラミング教室でも、個人でも出してもらってやるのがいいのかなって。チームだけでなく、個人で出場できるのは「たてもの部門」で、小学生だけが参加できるのですが、個人同士で集まったチームとかもあるようですし、ぼくたちのように、学校じゃない人たちのグループも増えてほしいなって思います。応募して作品を出すだけでもだいぶ自信がつくと思うので、失敗しても失うものもそんなにないはずだと思いますし。まずは手を動かしてみることから始めてほしいです。好きだったら出てほしいし、それが誰かに認めてもらえるかもしれないチャンスにもなるので、やってみるべきだと思います。
第7回 Minecraftカップ
学校教育の現場で使われている「教育版マインクラフト(Minecraft Education)」で作られた作品を全国・海外から募集して、内容を競い合う大会です。
高校生以下の子どもたちを参加対象として、「教育版マインクラフト」を使って与えられたテーマを元に作品を作り、部門ごとに応募します。
第7回Minecraftカップ(2025年度大会)では、「まちづくり部門」「たてもの部門」の2部門で作品を募集。集まった作品は全国・海外を14に分けた地区ブロックごとに審査を行い、最優秀賞をはじめ、その年の各賞が決定します。
詳しくは公式サイトをご確認ください
https://minecraftcup.com/