日本の古代の人はどんな人で、どんな生活をしていたのでしょうか?
ここ数年で進化した古代DNA研究から、日本人のルーツと歴史をさぐる特別展「古代DNA―日本人のきた道―」が国立科学博物館(東京・上野公園)で開催中です。

国立科学博物館の篠田謙一館長は、展覧会について「人骨からDNAをとって、たとえば、古墳時代に石棺に入っている人たちの人間関係、血縁関係までがわかるようになりました。その新たな学問のDNAが教えてくれた、日本人の起源あるいは集団のなりたちといったものをベースに、時代や地域にわけて歴史を再構成してみたというのが今回の展覧会です」と説明しました。
国立歴史民族博物館の名誉教授、藤尾慎一郎先生は、「今まさに先史時代研究および考古学全般に関して人間と文化との関係というものがゲノムレベルで一体どうなってくるのかという新しい局面に入りつつあります。この新しい流れを、若い研究者や、この展示を見るであろう小学生、中学生といった未来の考古学者たちにぜひ感じ取っていただいて、将来の研究への発展へとつなげていっていただければと切に願っております」と結びました。
展示は、「旧石器時代」「縄文時代」「弥生時代」「古墳時代」を時代ごとに紹介する章と、「南の島の人々」「北の大地の人々」を紹介する章の6つの章で構成され、イヌやイエネコと日本人の関わりについての2つのトピックをもりこんでいます。
章のはじめには、その時代を代表する頭骨が展示されていて、頭骨の人がどんな人物で、生きていた時代はどんな時代だったのか、DNA研究で何がわかったのかを語りかけてきます。親しみやすい話し方や生活の様子に、まるで古代の人たちと会話をしているような気分になります。
第1章の「最初の日本人―ゲノムから見た旧石器時代の人々」では、沖縄県の石垣島で発見された「第4号人骨」とよばれる、2万7000年前の全身骨格のそろった人骨を展示しています。この人骨のDNA分析に成功したことで、はじめて日本列島における旧石器時代の人の核ゲノム情報が明らかになりました。

第2章の「日本の基層集団―縄文時代の人と社会」では、人の形や、陸や海の生き物などの形をしたかわいい土偶などがたくさん登場します。
第3章の「日本人の源流―さまざまな弥生人とその社会」では、弥生時代、日本列島にさまざまな遺伝的な特徴をもつ弥生人が誕生し、その復顔像を見ると、現代人に近い顔つきになってきており、「日本人のルーツ」を感じることができます。

右:青谷上寺地遺跡8号人骨(男性) 弥生後期2世紀 鳥取県青谷寺地遺跡 鳥取県立青谷かみじち史跡公園蔵
第4章の「国家形成期の日本―古墳時代を生きた人々」で展示されている馬形埴輪は、大阪以外では初の展示となります。日本列島に馬がやってきたのは、実は古墳時代以降なのです。

下:行者塚古墳出土轡3点(複製) 古墳中期、5世紀 兵庫県行者塚古墳 加古川市教育委員会蔵
第5章の「南の島の人々―琉球列島集団の形成史」や、第6章の「北の大地の人々―縄文人がアイヌになるまで」では、ゲノム解析や出土品などを通して日本列島の南と北でそれぞれ独自の集団が文化を発展させてきたことを紹介します。
また、「トピック1 イヌのきた道」、「トピック2 イエネコの歴史」では、日本人とのむすびつきが強いイヌやイエネコも登場し、そのルーツにせまります。
骨にのこされたDNA情報をもとに復元した、縄文犬と弥生犬の模型は今回が初公開。最古のイヌの祖先とされるニホンオオカミの剥製は、当時小学4年生の女の子が発見したことで話題となった、国立科学博物館の収蔵庫で長年「ヤマイヌの一種」として保管されていたものです。足元のつめがのびていることから飼育されていた可能性が高いそうです。

オオカミへの信仰が深い神奈川県の清川村の民家で「家の守り神」として保管されていた5体の頭骨も展示され、これらをそろって見ることができる機会はなかなかないそうです。

ネコの足あとである可能性が高いとされる「動物足跡付須恵器」は、動物の足あとがついた土器としては国内で最も古いものの一つです。

特別展「古代DNA―日本人のきた道―」
■会期: 6月15日(日)まで
■開館時間:9時〜17時(入場は16時30分まで)
■休館日:月曜日 ※ただし6月9日(月)は開館
※会期・開館時間・休館日等は変更になる場合がございます
■会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
■公式サイト:https://ancientdna2025.jp
■7月19日(土)〜9月23日(火・祝)まで名古屋市科学館(愛知県)にて開催
取材協力:国立科学博物館展示部/特別展「古代DNA―日本人のきた道―」広報事務局
(取材・撮影:2025年3月14日「デジタル少年写真ニュース」編集部 吉岡)